
地図は作り手が読み手を如何に意識して作るかによって、情報の宝庫ともなり、逆にただの図面ともなってしまうというなかなか奥の深い情報伝達手段と言っていいのかもしれません。そうであれば前者となるよう工夫したいと考えるのが自然でしょう。
では具体的にどのようにすればよいかについて少し言及してみましょう。まず考えておくべき必要があるのは、強調したい情報を事前に明確に決めておくこと。一番まずい情報の表し方とよく言われるものが、なんでもかんでも盛り込んでしまうという情報過多タイプ。確かに情報は多いほどいいと言えない事もないですが、メリハリの利いた表現にこそ読み手は段階的な情報の入手が可能となります。まず最低限知りたいことがわかれば、次にもっと詳しく知りたいと考える人にはその道筋を示してあげればいいのです。
実際これを実現させようとすると、単に情報の選択だけでなく、その表現方法にまで考えを深めていかなければいけません。それは記号などの大きさや配置であったり、カラーであれば目立つ配色であったりと方法はいくらでも考えられることでしょう。行きつくところは、その地図をどういう目的で作るのか、どういう人が読み手となりそうなのかを予測し読み手に適した方法を考えていくことに尽きるでしょう。このような方針が明確になっていれば、あとはそれを実現させるためのテクニックの問題と言ってもいいかもしれません。
ただし、ここで注意しないといけないのは、地図に使用されている記号などには昔からの決まり事というものが存在します。これを無視してなんでも好きなように表現していい、とはなりません。なぜなら、地図本来の公共性(事実を表現するという)というものがあるからにほかなりません。限られた人しかわからないまさに「宝の隠し場所」の地図ででもない限り、無視できない原則と言えるでしょう。
ちょっとテクニックの必要な等濃図

情報の効率よい表現のため、図形式で表したほうが受け取る側では理解しやすい場合が往々にあるものです。そのような時に面データという広がりある情報を表現するのに際し、適正な選択を助ける各種作図法が存在します。データの特性という、点、線及び面といった分類が選択にあたり役立つと言われています。そのような考えのもと、面に関わる情報を不連続で協調表現できる作図法として「等濃図」というものがあります。
同様な作図法として色分け図とも呼ばれるコンプレス図というものもありますが、この図の特徴とする対象エリア内の平均値でエリヤ全体を表現するのに対し、当作図法は同様なデータに基づくものではあっても例えば行政区画というような境界を前提に作図するコンプレス図とは異なり、境界に拘ることなくあくまでデータの分布を優先した表現方法で作図するという特徴を示すものです。したがって作図に際しては手間も増え、表現上判断を伴うと言った場面もあるため必要とされる知識もさらに求められ、技術的な特異性が増すという点であまり普及されていないとも言われています。
但し、特にこのような同一エリア内でもその分布に突出した差異があるような分布を敢えて強調したい場合はこのような作図法もあることを知っていれば検討に値するのではないかと考えご紹介しました。